今回最も忙しかった一日!

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ネストル・マルコーニ

この日は巨匠ネストル・マルコーニが訪ねてきてくれた。この人とは本と・付き合いが古い。78年頃だったろうか、まだあの「カーニョ・カトルセ」というタンゴ・ハウスがブエノスアイレスの真ん中にあって、セステート、タンゴ、セステート・マジョール、ビルヒニア・ルーケなど錚々たるメンバー出演していたタンゴ・ハウスで知り合った。この店は、ユダヤ系の経営者で、いわゆる観光客相手ではなく、ブエノスのタンゴ好きたちに寄りついてもらえる質の高い店だった。しかし、そんな美しい発送の店が当時のブエノスアイレスでは成功するはずもなく、少しづつ下火になっていったのだが、その少し前くらいにマルコーニは、ここで所謂箱アーティストとして働いていた。猛一人、そこにあのギタリストのフアンホ・ドミンゲスがいた。通常週末は流行るが、この手の店に限らず、週の始まりあたりはいつも店は空いていた。しかし、この店のはやらない時、この二人はいつもタンゴを即興でもの凄いものに作っては楽しんでいた。二人とも、所謂アドリブでもの凄い演奏をできるのは、この時の練習のたまものと思う。もの凄い陰険勝負だったから。

 

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ネストル・マルコーニ

やがて、決して観光客を嫌っていたわけではないが、その前にブエノスアイレスのワイン好きとタンゴ好きが先に集まる「クルブ・デル・ビーノ」というライヴ。ハウスに出演するようになった。この店はしばらく繁盛しながら続いたが、ここでの週末はいつもマルコーニのキンテーとが聴けた。この頃から、ブエノスアイレスに着くとまずこの「クルブ….」に顔を出すようになっていた。やがて、クルビも経営者が飽きてしまったのか閉店した。すると今度は、ボルヘスが好んだというブエノスアイレスのパレルモ地区不動産業者たちが首を付き合わせて新しい粋な街作りをしようと、名前もパレルモ・ソーホー、パレルモ・ハリウッドと名付けて開発しだしたが、そのパレルモ・ソーホーの真ん中に「カフェ・オメロ」が開店し、またマルコーニが中心になって音楽家たちが集められた。まさに、凄いメンバーたちの集まる店だった。リドルフィ、タランティーノといった巨匠たちに歌手はゴジェネチェとアドリアーナ・バレーラというもの凄い編成。それは凄い演奏だった。89年、外務省の大イベントで行った「タンギッシモ」のアイデアはここから生まれた。これはブエノスアイレスの古いタンゴ・アーティストの間でも傑作と評価されたショーだった。

すでに何年も前からマルコーニはブエノスアイレス市立タンゴ・オーケストラの指揮・編曲・バンドネオン奏者として活躍している。初代のカルロス・ガルシーアから、ラウル・ガレーロなどいろいろな指揮者が名を連ねていったが、このオケは一応公務員で、うまくやろうと下手に演奏しようと給料が変わらないからメンバーの士気が上がらないとまったくつまらない楽団、とある巨匠に教えてもらったことがある。しかし、このメルコーニはミュージシャンズ・ミュージシャンだ。彼があの粋な編曲で式台に立つといつもメンバーの背筋が伸びる。マルコーニとはそんな巨匠だ。

 

今回また三浦一馬との共演、大阪フィルとの共演で来日し、その世話をすることになり、一応招聘に関する仕事は片づいているのでとくに会う必要もないのだが、土曜日にCCKで行われる市立タンゴ・オーケストラ公演のリハが近くであるというので私のホテルに寄ってくれたわけだ。いつものことだが、これほどの巨匠なのに、会うといつも冗談ばかりでなかなか本題に入らないが、今回も一応日本での行動を確認するくらいで話は終わってしまった。土曜日のCCKのコンサートは帰国前日で忙しいから行けないと断ったが、恐らく素晴らしい公演だったと思う。

 

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ファビオ・ハーゲル
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ファビオ・ハーゲル・セステート

次に、今後招聘予定のあるファビオ・ハーゲル。彼は今まで何度も日本にやってきているが、日本のファンの心を一番掴んできたバンドネオン奏者だ。昔からタンゴのCDを発売してきた日本のビクターでは一番のセールスを記録してきたアーティストだ。今までも「セニョール・タンゴ」「ビエホ・アルマセン」などブエノスの一流タンゴ・ハウスで長く看板楽団として活躍しているが、現在は「サボール・ア・タンゴ」の専属で活躍中。夫人は昔日本にもやっていたダンサーで、夫婦でステージを作って廻しているわけだ。さて、昨年までは、このブエノスアイレスには物凄い観光客がやってきて、サボール・ア・タンゴだけでなく、セニョール・タンゴ、タンゴ・ポルテーニョと言った店は一日3廻しもするほどの好調さだったのが、今年に入って急激に観光客が減ってきているのだという。まだ真冬はヨーロッパの客が呼べるから良いのだろうが、今の時期は今まではブラジルからやってくる観光客が一番多かったのだが、ご存じの通りブラジルはオリンピックを控えているのに経済は大不況の上、大統領の弾劾騒ぎにまで発展してしまって、観光どころの状況ではなくなったというわけだ。いよいよ月曜日はショー無し、と言う店も出始めているそう。

 

このファビオ、元々はダリエンソのスタイルが得意だったが、今ではプグリエーセからピアソラまでなんでもアレンジして受けさせてしまう、ある種の天才だ。いよいよまた海外公演を真面目に手がける時期がやってきたらしい。日本にもそろそろやってきたもらいたい。

 

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フリア&クラウディオ
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アレハンドラ&ダニエル、中央は息子の天才ダンサー

そして、今年のタンゴダンス世界選手権アジア大会の審査員たち。今年は例年にも増して素晴らしい2カップ理がやってきてくれることになった。毎年ステージ部門では一番重要な立場で審査員を務めてきているクラウディオ・ゴンザレスと、2年前に来日してまさに芸術的な振付を見せてくれたフリア・ウルティのカップル。このカップルはいずれもプロ仲間たちからは絶大な人気を誇っていたが、実は3年ほど前から一緒になって振付、作品作りに邁進してきていたのだそう。今回も審査員ではあるものの、中身の濃いデモンストレーションを見せてくれるという。もう一カップルは毎年ルナパークの決勝でアトラクションをクンで見せてくれているグループ「コルポラシオン・タンゴ」のリーダー夫妻、アレハンドラ&ダニエル。あまり知られていないが、実は昨年のチャンピオンを始め、ステージ、ピスタ両部門の数々のチャンピオンたちを教えてきた素晴らしい教師でもある。この2カップルが今回は特別なアトラクションを用意してやってきてくれる。このアトラクションだけでも選手権の会場に足を運ぶ価値がありそうだ。

 

そして、この夜はメトロポリタン選手権の予選が始まっていたので、市事務局のフアンホと一緒に訪ねることにした。場所はダンススペースとして_DSC9312は老舗の「サロン・エル・ピアル」もう約70年近くこのブエノスアイレスのダンスの歴史を支えてきたホールだ。広さと言い、雰囲気と言い申し分ない会場。ここでタンゴ部門、ミロンガ部門、ワルツ部門が競われているが、タンゴ部門の中でも地震のある連中がみろんが部門にも出場しているとあって、特にミロンガ部門は見所が多かった。ワルツ部門は果たしてこの選手権に必要なのか?しかし、終始明るい雰囲気という羨ましい中での決戦だっ_DSC9350た。特に我々のいる席には教師協会の会長(その昔、日本でのタンゴ連盟設立の時に後援依頼したら偉そうにああだこうだ言うものだから喧嘩した記憶もある)や市の関係者等飲ンべえばかりが集まってくる。この日は朝から忙しかった。さすがに限界です。

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