コロンビア、和平合意の国民投票否決!

_91494858_035664350-1この間世話になってきたボゴターのアナ女史がFBで「まさかこの国に対して泣くとは思わなかった」と悲しい論調で書き綴った。そういえば10月2日は、コロンビア政府とFARCとの和平合意の是非を問う国民投票の日だった。恐る恐るニュースを覗くと、なんと本当に反対派が多数になった。52年間の両者の武力闘争に終止符を打つはずだったし、つい先日板ボゴターの街の雰囲気も、圧倒的に賛成の雰囲気に溢れていたからだ。

しかし、ボゴターの雰囲気だけで、国民投票の結果を判断するのは確かに早計だった。世界のメディアも、サントス、ティモチェンコ両氏にノーベル平和賞を与えようとしたノーベル委員会も、一番肝心のコロンビア国内の事情を飛び越して平和到来のニュースをまき散らし過ぎだった。

もちろん、多くのコロンビア国民にとっても和平の実現は悲願だったし、コロンビアでも事前の世論調査では賛成は画圧倒していたから。ところが、今になって考えて見ると、一番肝心のFARCが奪った26万人の命の家族、800万人の住まいを失った人々の気持ちが計算されていなかった。合意内容は以下の通りだ。

・FARCは最終的な和平合意の後180日以内に戦闘を停止
・移行期間に暫定地域を設定し、ゲリラメンバー7000人のためにキャンプを設営
・民間人のキャンプ立ち入りを禁止し、ゲリラメンバーの安全を確保
・ゲリラの武器は国連の監視団に引き渡す

_90077880_a9750417-b38b-467d-b0e9-b84574a7072eさらに、反政府ゲリラのメンバーが人質の拉致や殺人への責任を問われず、議会に議席を得ることまで含まれた。しかも、前大統領で、まだまだこの国の有権者に力を持つアルバロ・ウリベがこの合意内容には反対していることも軽視されすぎていた。

サントス大統領も、こうした国際世論に自信もあったのだろう、U2のボノやリンゴ・スターまで動員して投票を呼びかけたが、逆効果だった。

国民投票では、投票所の99%の開票が終了した時点で、反対票は50.2%となり、賛成票の49.8%を上回った。票数の差は6万3000票。投票総数は1300万票。投票率は40%と低調だった。

ここまで国際世論が合意に傾むけば、サントスの油断もわかる気がするが、その前に「根回し」が必要だったのは当然だった。

ただ、FARCにはもう再び元の戦闘を続ける余裕はないし、サントスも合意内容を詰め直す必要もあるだろう。これですべてが終わったわけではないから、努力を続けるしかないのだと思う。

東京タンゴ祭2016

浅草公会堂での東京タンゴ祭2016が昨日終了。今回はスペシャル・ヴァージョンと言うことで、韓国、台湾、フランスのタンゴ仲間も加えて、どちらかというと若向きのタンゴ・グループが中心だった。

まずは仁詩の主宰するキンテート・ヴィルトゥス。仁詩はいくつかのスタイルのバンドをやっていて、毎回話題の多いタンゴを披露してくれているが、このヴィルトゥスはいわば、仁詩の最も大事にする本格的グループ。須藤信一郎 (ピアノ) 高杉健人(ベース)仁詩(バンドネオン)田中庸介(ギター) 水村浩司 (バイオリン)メンバーそれぞれが立派なキャリアを持っているし、実力者揃い。仁詩は京都出身だが、現在は東京を中心に全国で演奏活動を続けている。この日は、その実力を存分に発揮したステージになった。
1.ポル・ウナ・カベーサ(首の差で) 2.カナロ・エン・パリス(パリのカナロ) 3.ロス・マレアードス(酔いどれたち) 4.コンフェッティ(紙吹雪)仁詩・作曲 5.コンシエルト・パラ・キンテート(五重奏のためのコンチェルト=ピアソラ)

次に韓国のコー・サンジ・バンド。コー・サンジは韓国出身で、バンドネオンを小松亮太に師事。東京バンドネオン俱楽部公演と、小松亮太のユニットに3 年間参加。日韓を行き来しながら4 年間学んだ後にブエノスアイレスでフェデリコ・ペレイロとネストル・マルコーニに師事。2011 年オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ・エミリオ・バルカルセを卒業し、ブエノスアイレス市のイベント、フェスティバル、ミロンガ、国立図書館などで演奏。韓国から来日するKoh Sangji(Bn)、Moon Seok Choi (Pf)、Jongsu Yoon (Vn) 、Dongmin Kim (Gt)の4 人に日本を代表するベーシストである田中伸司(Cb) が加わった。
彼女は今までにも何度か来日しているが、自信のバンドでの来日は初めて。みんなが期待していたが、その期待に違わない演奏を聴かせてくれた。日本のアニメ・ファンと言うとおり、自由な発想のエレクトリック・タンゴでオリジナル作品が中心のステージだったが、ピアノを始め、メンバー全員が湧き上、実力者揃い。最後のチン・チンでのピアノ・ソロには会場中が喝采の嵐。ダンスの世界もそうだが、韓国には日本のような昔のタンゴ・ブームがなかったから、「これはタンゴではない」とかの批判もなく、新しい音楽としてタンゴが評価されるから若い層にそのまま浸透していく羨ましい環境だ。
1.Ataque(アタケ)コー・サンジ作曲 2. Raindrops in the roomコー・サンジ作曲
3.Road Bike コー・サンジ作曲 4.無限のユピ コー・サンジ作曲3:30
5.成層圏 コー・サンジ作曲 6.Evangelion medly (エヴァンゲリオン・メドレー)鷺巣 詩郎Sagisu Shiro作曲 + 出撃コー・サンジ作曲 7.Chin Chin(チン・チン)

早川純は東京芸大を卒業後、バンドネオンを小松亮太、西塔祐三、M.バルベーロ、J.J.モサリーニに師事。03、04年にタンゴ界の重鎮L.フェデリコ等の日本公演に参加。小松亮太オルケスタのメンバーとして南米4カ国で演奏。12年、13年に国際アコーディオン・コンペティションでそれぞれ3位、特別賞入賞。ネオタンゴ・ユニットTango-jackを主宰。14年に菊地成孔のユニットメンバーとして、日本国内最大のジャズイベント「東京JAZZ」に出演した後、フランスに渡り活動しているが、今回、フランスで組んだトリオでの来日。早川純(Bn)、久保田美希(Pf) と、フランス人ベーシストのレオナルド・テルージによるタンゴ・トリオ。それぞれのフィールドで音楽家としてのキャリアを積んできた3人がパリで出会い、互いの音楽性や才能に惹かれあう形で、2015 年の春に結成。早川とテルージの作・編曲によるレパートリーは、タンゴ本来の情感やエネルギーを色濃く湛えながらもモダンであり、伝統的なポピュラー音楽としてのタンゴの枠を超えた、芸術音楽としてのタンゴの再評価を目指している。早河はもちろん、ピアノの久保田、ベースのテルージも、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

1.ディビーナ J.モラ作曲 早川純編曲 2.アサバーチェ 早川純編曲 3.インボルシオネス  レオナルド・テルージ作曲 4.クエントス・グラーベス  レオナルド・テルージ作曲 5.リベルタンゴ  アストル・ピアソラ作曲 早川純編曲

オルケスタ・アウロラは、メンバーそれぞれの活動が忙しく、なかなか全員が揃うのが難しいが、この日はメンバー全員が集合した。前回はなかなか意欲作ばかりを並べたが、やはりもう少しタンゴ祭の客層に合わせた聴きやすい曲をやろうと反省したこともあって、今回は、いかにもタンゴ、というラパートリーが並んだ。演奏はさすが、非常にリズミックでダイナミックな演奏が鳴り響いた。毎回毎回アウロラは確実に進歩していると思う。しかし、全員が忙しすぎるのと、私の方もなかなかゆったりとそんな気分にならなく録音もままならない。そろそろ新録もとは思っているけれど….。リーダーのひとり、会田桃子は韓国や、台湾に招待されて結構アジア諸国仁摩伝送活動を広げているが、その中で、台湾にももの凄く巧いバンドネオン奏者がいるという。そこで今回はそのバンドネオン奏者を呼んで一緒に演奏してもらうことにした。ヨーロッパのバンドネオン・コンクールで優勝した経験もあると聴いていたが、確かに。バロックをやっても3声のどれをもしっかりと音が繋がって素晴らしい演奏になりそうな、凄い演奏家だった。名前はウー・ヤン・ラン(通称Mark)。自身も台湾で金テーとを持っていて、それもなかなか素晴らしいらしいから、今度機会があったら聴いてみたいと思う。今回はアウロラのバンドネオン奏者の北村君が他のコンサートの関係でリハもサウンド・チェックもできないというので、アウロラの6曲の間に2曲をアウロラと、1曲は「カミニート」をソロでやってもらったが、素晴らしかった。

青木菜穂子(ピアノ)東谷健司(コントラバス)会田桃子(バイオリン)吉田篤(バイオリン)北村聡(バンドネオン)鈴木崇朗(バンドネオン)ウー・ヤン・ラン(通称:Mark、バンドネオン)

アウロラ(1. カナロ・エン・パリス(パリのカナロ)2. トダ・ミ・ビダ(我が全人生)アニバル・トロイロ作曲  3. バルス・デル・ベルデ・ヌエボ(新緑のワルツ)青木菜穂子作曲)

with Mark (4.  トダ・ミ・エスペランサ (私の希望のすべて)会田桃子作曲 5. エル・チョクロ アンヘル・ビジョルド作曲 6. カミニート (バンドネオン ソロ )フアン・デ・ディオス・フィリベルト作曲)

アウロラ( 7. ポル・ラ・ブエルタ(再会を祝して) (会田歌)ホセ・ディネリ作曲、エンリケ・カディカモ作詞 8. エル・ディア・ケ・メ・キエラス(想いの届く日)カルロス・ガルデル作詞、アルフレド・レペラ作曲 9.シウダー・トゥリステ(悲しみの街)オスバルド・タランティーノ作曲)

そして最後はそそしそしてそしてそっっっdっっxそそして、トリはいつもの通り京谷弘司さんのクアルテート。その昔、早河真平さんも藤沢嵐子さんもご存命だった頃、日本のタンゴ界ではピアソラはどういうわけか嫌われていたが、私はこの京谷さんとピアソラの1点で意見が一致して、依頼仲良くさせて頂いている。バンドネオンがディアトニックではなく、クロマチックだからどうのこうのと言う人はいるが、大体そんなことを言ってるのは音楽がわかっていない輩の言い分だ。実際、アルゼンチンのアーティストたちに並べて聴かせれば、筐体にさんの演奏は一番評価されている。今回もいいとこ一人取り、の演奏だった。

京谷弘司(バンドネオン)淡路七穂子(ピアノ)田辺和弘(コントラバス)吉田篤(バイオリン)

1.スール(南) アニバル・トロイロ 2.マルガリータ・デ・アゴスト (8月のマルガリータ) ラウル・ガレーロ 3.シエンプレ・ア・ブエノスアイレス(いつもブエノスアイレスに) 京谷弘司 4.レコルダシオン (回想) 京谷弘司 5.カナロ・エン・パリス (パリのカナロ) アレハンドロ・スカルピーノ 、 ホルヘ・カルダレーラ 6.アディオス ノニーノ(さよならお父さん) アストル・ピアソラ 7.ベラーノ・ポルテーニョ(ブエノスアイレスの夏)アストル・ピアソラ

今回は、いつも人気の小松真知子さんの楽団は同日にコンサートが重なったために参加してもらえなかったり、学生の早稲田も、近くに別なコンサートがあるからと言うので外れてもらったが、まぁ、なかなか質の良いタンゴ祭になったと思う。途中で今回のメンバーとも話していたのだが、客層に若い人間たちがいない。これがつらい。例えば、韓国や台湾では昔の日本のタンゴ・ブームみたいなのが存在しなかったから、若いグループの演奏そのものが評価されると、若い層が飛びついてくるのに、日本では「タンゴは古い人たちの音楽」みたいになって、なかなか若い層に聴いてもらえない。昔、小松亮太やダンス仲間が、なんとか若い層にタンゴを聴いてもらいたいと言うことで、年齢制限をしたことがあるらしいが、気持ちはよくわかる。若いファンが会場に行くとほとんどが老年層だと、音楽の亡いようにかかわらず、どうも次回は現れないという。このタンゴ祭も、老齢のファンに来て頂けるの嬉しいことなのだが、なかなか若年層のファンに来てもらえない。特に今回はどちらかというとじゃ浮く年総務機だったから、残念だった。ダンス・ファンはまだ若い層に支えられているが、同じような問題を抱えている。なんとかこれを脱皮しないと、タンゴはやがて、となってしまいそうで怖い。