今年に入ってから、コロナが収束して3年ぶりに「ラ・フアン・ダリエンソ」春のタンゴ・ツアーを行い、全ての予定を終了した。1月17日に来日(実際には3パートに分かれての来日)し、2月24日から3月16日までの台湾公演が終了するまで全30回のコンサートを終了した。

このグループは、設立した翌年の2015年に一度日本+台湾公演を行ったが、8年ぶりのツアーとなった。名前の通り、往年のタンゴの大スター、フアン・ダリエンソの流れを組む若い楽団だが、8年前とはすっかりレパートリーも、実力も格段い進歩した素晴らしい楽団になってきてくれた。21年、22年と2度もツアーが最初から中止になっていたが、その間も連絡を取り合って、ゆっくり作り上げてきたショーだった。

この楽団は、フアン・ダリエンソの第一バンドネオンでコンマスだったカルロス・ラサリ(何度か来日させてきた)の孫のファクンド・ラサリを中心に結成されたグループだ。そのカルロス・ラサリが愛する孫のファクンドにバンドネオンを教え、当時の仲間たちで全く新しいダリエンソ・スタイルの楽団を作らせてきたのが始まりだった。やがて、カルロスはなくなってしまった。ラサリは、生前から、この孫を連れて日本に来たいのが夢で、一度は他のプロモーターと日本に来た(ファクンド抜きで)こともあるが、何度も何度も電話をかけてきてくれていた。孫のラサリは、どちらかというといつも本ばかり読むおとなしい青年だったが、カルロスの孫というので、親分に仕立てられた感じだったから、最初は周りの仲間たちに支えられての出発だった。

2012年に楽団を結成(実際には2014年にスタイルが完成)したこの若い楽団は、とにかく仲が良く、全員で音楽もアレンジもプロモーションまでも全員で行うという、見ていて非常に微笑ましい動きで、ヨーローパには結構自分たちで売り込んで何度かツアーを組むことを始めていた。ヨーロッパのミロンガではかなり評判にんっていた。日本公演後は、ファクンドも自信をつけて、バンドネオンの方もかなり練習したらしくめきめきと上達し、ダリエンソのタンゴの曲想から、ダリエンソ的な新作の創作、あるいは作詞間でして、カルロスから譲り受けた本格的歌手フェルナンド・ロダスにも歌わせるようになってきた。ダリエンその時代から、この楽団の歌手は本格的で、定評があったように、このフェルナンドは、まさにダリエン齟齬のみの歌なら何でもこなしてくれる大物歌手だ。第一バンドネオンのバダラッコは、カルロス・ラサリから直接指導を受けた仲間で、ファクンドの右腕だし、ピアノのパブロ・バジェは、タンゴに限らず、アルゼンチンのいくつものグループから声がかかる万能なピアニストで、仲間からも「マエストロ」呼ばわりされている。ちなみに、現在のアルゼンチンでは、日本人の女性歌手、折田かおりさんが超有名だが、彼女は、あるTV局のプロデューサーにその個性が認められ、恐らく日本人としては一番名の知れた存在になっている歌手のCD制作を全て任されていたりしている。折田さんは鹿児島出身で、タンゴ歌手になる夢を見ながらブエノスアイレスに渡ったが、世界的な番組「カンタ・コンミーゴ」という超の字のつく有名番組のプロデューサー、マルセロ・ピネリに、その個性を認められて審査員に起用され、アルゼンチンのお茶の間でも知られる存在になっている女性だ。パブロ・バジェはそんな人間関係の中でも活躍している存在だ。

さて、彼らは日本に来る直前に、あのコロナの発生で来日直前に日本ツアーが中止に追い込まれたが、それからも、インターネット上でのコンサートや、録音に、それこそ暇なく活動を続けていたが、昨年の3月、ヨーロッパや、日本でも感染が下がったときに、いち早く1ヶ月半のヨーロッパ・ツアーも実現させた。帰国してからも、ミロンガが開催されるようになって空は、笛押すアイレスだけでなく、その周辺都市からも引っ張りだこの活躍を見せてきた。私が2月に行ったときには毎日のように昼夜でブエノス郊外のミロンガから呼ばれてなかなか出会えなかったほどだった。

ステージの方は、じつはコロナの間も構成から演奏までかなりできていた。それを何度かネットでやりとりしたが、ファクンドは完璧な日本語で解説して空演奏するまでになっていた。しかし、そこまで日本語を話すのはどうもダサすぎる。と言う野で、ダリエンソの局はどれもわかりやすいし、間にあの完璧な歌とダスウのレアp−トリーを破産で、何カ所か、効果的なところで、効果的な出方でやった方が良い、とかなり作り替えることにした。これは大成功だった。日本では、「ダリエンソ本来のスピーディなステージ運びをそのままに」演奏させ、随所に遊びも挟むやり方にしたが、これが功を奏した。ダリエンその名曲をたっぷり聴けて、しかも歌もダンスもしっかり楽しめるステージの完成だ。

ラ・フアン・ダリエンソ La Juan D’arienzo(楽団):ファクンド・ラサリ Facundo Lazzari(リーダー兼第1バンドネオン)、リカルド・バダラッコ Ricardo Badaracco(第2バンドネオン)、オスカル・ジェマ Oscar Yemha(第3バンドネオン)、パブロ・ギンスブルグ Pablo Ginzburg(第1バイオリン)、フアン・パブロ・クラベナ Juan Pablo Cravenna(第2バイオリン)、エミリオ・パガーノ Emilio Pagano(第3バイオリン)、アンドレス・サンタルシエロ Andres Santarsiero(コントラバス)、パブロ・バジェ Pablo Valle(ピアノ)
フェルナンド・ロダス Fernando Rodas(歌手)、カルラ&ガスパル Carla & Gaspar(ダンサー)、サブリーナ&エベル Sabrina & Eber(ダンサー)、ルシアーナ&フェデリコ Luciana & Federico(ダンサー)