今年も盛り上がった東京タンゴ祭


先週のタンゴダンスのアジア大会に続いて,今週は今年で3回目になる東京タンゴ祭。今年もバラエティに富んだ11楽団が出演した。このタンゴ祭、もともとは2010年、アルゼンチン建国100年の年に我々としても何か記念になる行事をと考えて始めたのだったが、これが大好評、昨年、今年と続けることになった。とはいっても、毎年同じ出演者では…と思っていたら、いるいる、日本全国にはまだまだ実力のある楽団がたくさんいるものだ。昨年に続いて今年もなかなかフレッシュなタンゴ祭を届けられたと思う。

選手権だけでなく、このタンゴ祭も地方都市で活躍する楽団も参加できるよう,開催はやはり土日に限られるから、またまた会場探しが大変。昨年は渋谷に吊ったが、今年は好評だった浅草公会堂を押さえることが出来た。浅草寺の境内からすぐの所にある公会堂は雰囲気満点。何時の日か海外のオルケスタも招聘して規模が大きくできたとしたら是非ここで開催したい,と思うようなザ・東京的な立地。会場の前には数々のスターたちの手形が収められている。台東区が大衆芸能の振興に貢献した芸能人の功績をたたえ、その業績を後世に伝えるため1979年(昭和54年)に創設したもので、「スターの広場」と銘打たれている。この日は先日他界した山田五十鈴さんの手形に綺麗な花も添えられていたりした。山田さんはこの顕彰制度創設年のスターだった。アルゼンチン・タンゴ界も新しい楽団がたくさん輩出するようになって、老マエストロたちが色々な形で顕彰されるようになっているが、なんだか、その雰囲気と被るところがあって興味深い。

さて、出演陣の最初は学生唯一のタンゴ楽団、オルケスタ・タンゴ・ワセダ。昔は中央ルナタンゴをはじめ、慶応、明治など数多くのタンゴ楽団が存在していて,全国公演まで行っていたと言うが、もうかなり前からこの早稲田にしかタンゴ楽団は存在しなくなっている。しかし、この今のオルケスタ・タンゴ・ワセダにはじつは東京大学、中央大学など色々な大学からメンバーが集まって出来ている。学生の間にレベルの高い(これが重要だが)オルケスタが多くなると本当にタンゴ界もさらに明るい展望が開ける。そう思って選手権のアジア大会からこのオルケスタを起用してきたのだが、年々うまくなる。そこで、このタンゴ祭でも一番バッターで登場して貰うことにしたのだ。

例年、このオルケスタには当日の荷物の運搬や会場整理などのアルバイト込みで出演して貰っていたのだが、今年は「昨年、荷物を持った後、楽器をまともに弾けなかった。今年はアルバイトを外して欲しい」との要望。何を一丁前に、とも思ったが実際重たい荷物を持った後はなかなか楽器を演奏できるものではないし、それだけ真剣になって来たと、思い直して様子を見ることにした。結果的にはなかなか素晴らしい演奏だった。学生はせっかくうまくなってもそのメンバーが卒業してしまうと又一からやり直しだから大変だ。その面では今年はなんとか実力を発揮していたし、かなり聴ける演奏だったと思う。どうか、卒業後も演奏し続けて欲しいものだ。

タンゴ・ワセだを卒業したOBたちは、次々と楽団を結成して活動している。それも、それぞれがかなりレベルの高いところまで来ている。シエロ・アデントロ、ロス・ポジートスなど、思い思いにタンゴの楽しさを満喫しながら活動を続けているのが嬉しい。ポジートスはサラリーマン楽団なので、毎年転勤などでメンバーが代わるが、何よりタンゴを音楽を楽しむ姿勢が好評。実力もある。今回初登場の智詠のギター・デュエットは、ギターのテクニックに加えて歌まで披露。どれもうまかったが、この日のコンサートは彼ら辺りから盛り上がってきたと実感。拍手も鳴り止まなかった。キサス・タンゴも評判通りの質の高い演奏。ここの能力も抜群だから今後さらに期待したい。

仁詩のピナカスは,個人的にはいつも期待しているグループだが、昨年はレパートリーのせいかピンとこなかった。が,今年は思い切りしっかりした演奏を聴かせてくれた。インプロのセンスも良いし、さらにさらに今後期待したい。そして、このタンゴ祭の始まる2ヶ月前くらいだったろうか、ダンスのケンジ&リリアーナが弊社にやってきた。以前に彼らのコミックな振付のダンスを見ていて好感を持っていたので出演を迫ったところ、最近は九州で活躍するトリオとの活動が多いという。で、さっそくYOUTUBEでそのトリオを確認。それが、トリオ・ロス・ファンダンゴスだった。実際の彼らのステージではバイオリンの谷本さんがシャベリ、演奏する。彼らのステージにはあの喋りは必要なのだが、このタンゴ祭、時間の関係で喋りは無しと言うことが条件。それでもアコーディアン、バイオリン、キーボードの演奏は大したものだ。もう少し関東圏でも暴れて欲しいもの。

京谷弘司、小枩真知子&クリスタル、アウロラ,西塔祐三&ティピカ・パンパ辺りになるともう是非ともアルゼンチンの楽団にも聞かせたい高いレベル…コンサート評は弊誌の方で掲載されるからこれ以上は書かないが、ダンス以上に本場アルゼンチンの楽団のレベルに近づいているのが日本の演奏陣だと思う。この日は又日本滞在中のシーグレルもやってきて2曲ほど披露してくれたが,彼も日本の演奏レベルを高く評価してくれる一人だ。タンゴダンス世界選手権ならぬ、タンゴ楽団世界選手権出もやろうものなら、圧倒的にアルゼンチンと日本の勝負になるのになぁ。そのくらいレベルが高いし,若い楽団も確実に力をつけてきている。アルゼンチンが動かないなら,いつかこの日本でそんな企画を実現させてみたいものだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください