海外勢大奮闘のタンゴ・アジア大会


いよいよタンゴダンス世界選手権の季節がやってきた。今年は7月7日と8日の2日間。昨年まで会場として使っていた横浜の大桟橋ホールはなかなか評判も良かったのだが、311以降は「津波」に対する心配の声が寄せられて、昨年だけは一応会場の方や警察の方とも協議して、緊急時の対策はとっていたものの、やはり心配の声が止まらなかったこともあって都内で探すことにした。その結果、本大会は中野ゼロホールを予約することができたが、予選の会場は難航した。都内のホールでこの時期に土日続けて予約するのは並大抵ではない。かといって、海外や、地方からの参加者もいるから予選と準決勝、決勝を時期をずらして行う訳にもいかない。今回は予選の場所に、青山にあるスパイラル・ホールの好意もあって、ここで開催することにした。

7月5日、6日と審査員がNY、ブエノスアイレスから続々来日。毎年前後にワークショップなどを開催していたが、審査員が大会前にワークショップを開くことには疑問の声も上がったために、今年は完全に大会の審査とデモだけでの来日をお願いすることにした。日本でも人気者のガスパルは、現在新しいパートナーと組むことになって練習を始めているが、その新しいパートナーは現在ヨーロッパで仕事中で来日できなかった。そこで、いつも世界大会の決勝で審査を務めているギジェルミーナに話したところ、こころよくOKしてくれた。ガスパルとギジェルミーナという凄いカップルがこの大会だけで誕生したのはそんないきさつからだった。ギジェルミーナとは、個人的にマリアーノ・モーレスの日本公演の時からという古い友人で、選手権出会う度に、「何時連れて行ってくれんだ?」と言われていたので、彼女は喜んできてくれた。NYからは昨年もお願いしたホルヘ・トーレスとマリア・ブランコがやってきた。ユナイテッド航空が毎年スポンサーになってくれていて、この区喰うチケット持て今日してくれているから、アルゼンチン人でアメリカのビザを持っているアーティストたちからの選択だけになかなかこれも簡単ではないが、みんな、日本が大好きなので、非常に良いメンバーが集まってくれたと思う。審査員はこのほか、世界チャンピオンのヒロシ、チズコ、そして、アジアチャンピオンから棚田氏が加わって総勢7名で厳格な審査が行われる。

さて、7日。スパイラルホールは出場者の多い予選大会にはやはり少し狭い。普通のイベントだったら別に狭いわけではないのだが、この選手権では、真中に大きなダンス・スペースを録るためにどうしても狭く感じてしまう。しかし、例えば、審査員が集う部屋を提供してくれたり、何から何まで協力頂いた。しかも、その狭くなった客席にたくさんのお客が一杯になって見て頂いたので、かえって熱気十分のイベントになった。

さて、今年の出場者はサロンが54カップル、ステージが17カップル。昨年と比べると、サロンが少し減少したが、ステージが増えて、全体としては微増だ。しかし、予選が始まって審査員も驚くほど技術が向上している。今年は日本の他、韓国、台湾、フィリピン、インドネシアの皆さんが出場してくれたが、特に韓国勢のレベルが高い。今までは韓国というとサロンが優勢だったが、今年はステージにもひとつのカップルが出場。そのカップルが予選から注目された。日本勢もサロンのHiromi&Natsuを筆頭にかなり高得点を得ていたが、韓国勢の躍進が凄い。韓国の事情に詳しい人によると、「韓国は何年か前の日本のように、若いカップルがしのぎを削っている。日本勢は今までにすでに8人のアジア・チャンピオンを輩出してきて、彼らは普通もう選手権には出場しないから、新しい、若いカップルが多く誕生してしのぎを削っている韓国勢が熱く見える」とのことだ。来年はいよいよ10周年大会、今までのチャンピオンたちもふるって参加する、そんな大会にしてはどうだろうか?

サロンもステージも、今年は上位にいるカップルは相当練習を積んできているようでかなりのレベルだ。それぞれのカップルが相当自信を持っているように見える。

結局、準決勝進出者はサロンが31組(30位が同点で一組追加)、ステージは10組が準決勝に進出することになった。この選手権をやっていて,一番辛いのがこの瞬間で、一年間練習してきて、予選落ちしてしまうカップルの心情を考えると切なくなるが、選手権だ、仕方がない。審査員たちは、この日は終わってすぐにホテルに缶詰。外部との連絡をとることも出来ないことになっている。遠くから日本にやってきて会場とホテルの往復だけという審査員たちも可哀想だが、これが世界大会の決まりだからしょうがない。

さて、2日目。中野ゼロ・ホール。ここは客席からステージ全体が見渡せるので,選手権には理想的なホールだ。この日はオルケスタ・デ・タンゴ・ワセダ、オルケスタ・アウロラが出演して彼らの演奏をバックに踊るミロンガタイムもある。しかも、審査員のダンサーたちのデモが目当てのファンもたくさんやってきた。

流石に準決勝ともなるとダンスのレベルも上がって,かなりの緊張感が生まれる。サロンも、ステージも明らかに昨日以上に熱の入った演技が続く。日本人カップルも昨日の韓国勢たちの活躍に刺激されてか,この日は明らかに熱が入った演技を見せる。それにしても、韓国勢の勢いも又止まらない。大接戦の準決勝だった。サロンはMartin&ユカ、Jiwoon y Weining(韓国と台湾のカップル)、Hiromi&Natsuの1位〜3位までがそれぞれ尾。1点差という僅差。10位のフォリピンとインドネシアのカップル、Dennis&Irmaまで、10年近く日本に住むアルゼンチン人と日本人のカップル、Martin&ユカを日本に組み入れても日本勢は5組が決勝進出。それだけ海外勢が躍進したということ。ステージは、韓国のPaso Han&Peninsula Choが一位で通過。以下中澤源太&Mana、高志&めぐみ、としゆき&まきこ、Aco&Mariko、原貴彦&加藤舞子とつづいた。広島のRodrigo&Natsukoも検討したが、残念ながら準決勝で敗退となった。

決勝にもなると、いよいよ世界大会並みの緊張感の中での演技となった。サロンは、もう誰が勝ってもおかしくないほどのレベルだ。観たもの全員がアジア大会のレベルが格段にあがっていることを実感。アルゼンチン滞在中から向こうでも人気の高かったHiromi&Natsuが純日本人カップルとして、0.2点差で首位と追いかける展開だったが、どのカップルも特徴を生かした踊りで、誰がチャンピオンに輝くのか、確信を持てたファンはいなかったのではなかろうか。ステージ部門。これも、高レベルでの戦いとなった。しかし、韓国のPaso Han組の人気が圧倒的に感じる。中澤源太&Mana組への拍手もすごかった。スピード感、オリジナリティ…この辺の少しの差が順員に大きく影響しそうだ。

決勝すべての演技が終わって、結果発表まで、いよいよ楽しみな審査員たちによるデモ・タイム。世界チャンピオンのチズコ&エスキエル、ヒロシ&キョウコ。すでに風格すら感じる素晴らしい演技が続く。そして、個人的には一番楽しみにしていたギジェルミーナとガスパルの演技。ギジェルミーナとは昔から何度か仕事をしてきているが、実は最近は世界大会の審査員として見かける以外は彼女のダンスを久しく見ていなかった。マリアーノ・モーレス、オルランド・トリポディ、モサリーニ、コロールタンゴなど名だたる楽団と共演してきた他、「タンゴ・ポル・ドス」「タンゴ・アルヘンティーノ」「フォーエヴァータンゴ」などで大活躍してきたダンサーだ。実は私も知らなかったが、97年、フィギュアのロシア・カップルに「リベルタンゴ」の振付をし、翌年の長野オリンピックで彼らが金メダルに輝いていた。今回はたまたまアメリカのビザを持っている人間の中で探していたら、ギジェルミーナの名前が思い浮かび,電話したら即座にOKの返事が来たのだった。で、ガスパルとは2〜3度ど合わせただけであの素晴らしい振付が完了していた。度肝を抜かれる演技だった。やはりプロの世界になるとレベルがこんなにも違うのか,と思い知らされた。NYをyこてんに世界中で活躍するホルヘ&マリア・ブランコは昨年も来てくれたが、マリア・ブランコはもうNYに居を移してホルヘと共演することが多くなったから呼吸もぴったり。昨年にも増して妖艶なタンゴを見せてくれた。

そして午後7時頃、決勝の結果発表。サロンは準決勝をトップ通過していたマルティン&ユカがやはり新チャンピオンに。以下、順位は次の通り。ステージも、準決勝トップ通過の韓国Paso Han組がほぼ満点の高得点で新チャンピオンに。以下順位は次の通り。源太組も相当健闘したが、準チャンピオンに落ち着いた。昨年に続いて海外勢の勢いがそのまま反映された大会だった。来年は10年目の記念大会だ。日本勢の大健闘を期待したいところだ。

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