新しい駐日アルゼンチン大使のことなど

5月24日、アルゼンチン大使館の公邸でで、日本アルゼンチン協会の懇親会。あまり参加しないが、年に一度の懇親会は出席できる時は出席するようにしている。今年は親しくして頂いたラウル・デジャン前大使が帰国し、新しい大使が来て初めての懇親会だったので参加。私はあまり大使館関係のイベントには積極的な方ではないのだが、さすがにアルゼンチンとは建国200周年あたりからなにかと一緒に考えて来ただけに、あの公邸には行くことが多くなった。今年は、あのビル全体の空調が止まってしまって大変なようだった。いつまで?と聴いたら「夏までには直してもらわないと」と悠長な返事。アルゼンチンらしい。

 

_DSC9363ところで、アルゼンチン大使は20010年まで着任されていたポルスキー大使あたりから親しくさせて頂いている。2004年からタンゴダンスアジア選手権をやり始めたこともあって、挨拶をお願いしたり、いろいろ依頼毎も多くなってきたから。当時はオセラ公使という非常に暖かいお人柄の公使がいて、何度か大使の代わりに挨拶して頂いたが、大使館との気分的なつながりは彼の存在が大きかったと思ってる。ポルスキー大使の頃から、日本とアルゼンチンは、まだ大事ではないにしても経済政策上のつながりが強くなってきたと思う。そして、飯塚さんがNTTドコモからNECに移られてビッグローブの社長をなさっていた頃、TVのデジタル回線を日本方式に採用してもらうために一緒にリマとブエノスアイレスに同行したが、その際、私の友人、グスターボ・ロペス官房副長官がまさにその仕事のためにクリスティーナ大統領から直接任命された直後とあって、フランスに遅れをとっていたかに見えた日本方式が最終的には決定。南米全体に日本ブラジル方式(ブラジルが日本方式を決定する時に技術上の提携もしていたためにこう呼ばれることになっている)が広がった。そのイベントの場で、実はこれから在日日本大使にラウル・デジャン氏が決まったというので紹介された。だから、デジャン大使には着任後も本当に良くして頂いた。その間、ロペス氏や彼の政敵ではあるが(もともとは仲間だった)ロンバルディ市文化大臣などが日本を訪れてくれた時も、大使館にもお連れして大使にも喜んで頂いた。結局、デジャン大使は選手権やグラン・ミロンガにはほとんど確実に来てくれて挨拶して頂いた。選手権とかミロンガは開催が土日なので、実は彼らの休みを邪魔する訳なのだが。だから、デジャン大使(2010年6月〜2016年4月30日)の離日のパーティでは、凄く寂しい感がこみ上げてきたのを覚えている。

 

IMG_2462
ベロー大使

そして、この日は以前からいらっしゃるフェリーペ公使に新しい大使を紹介して頂いた。新駐日アルゼンチン大使は、アラン・クラウディオ・ベロー閣下(His Excellency Mr. Alan Claudio BERAUD)だ。ベロー大使は、私がブエノスアイレスに滞在中に着任、4月21日に皇居で天皇陛下に信任状を捧呈し、正式に駐日アルゼンチン大使として着任したが、着任した早々の大イベントがミチェッティ副大統領の来日という大仕事。ベロー大使はもちろん経済が一番のお仕事だが、国も新体制になってオバマ大統領を迎え、日本とも開かれた経済関係を促進したい、そのための大イベントを早速任されたわけだが、大成功に終わったよう。とりあえず、文化関係を取り仕切るフェリーペ公使も一安心と言ったところ。アジア選手権には新大使も公使も出席してくれると言うことで、盛り上げていくことになった。

 

さて、大きな話題を呼んだ伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問。いろいろ物議を醸しての来日であったが、オバマ大統領の広島訪問とスピーチ。サミットそのものの運営は完璧だったのだろうが、際だったのが我が国の首脳の頼りなさ。スピーチがいつもコピペじゃいかに熱意がないかを示しているようなものだし、海外のメディアだって馬鹿にして報道すらしないだろう。アベノミクスの成功・失敗を巡る与野党の論議が活発だが、今度は選挙を巡って消費税10%増税への引き上げをやめるためにの言い分で程度の低い論争が活発。賛成・反対は別にして、民主党政権時代のどうにも重苦しい雰囲気から、世間を解放したのは事実だ。円安、株高を招き、輸出_DSC8939が伸びて、国民の給料も上がって、物価も上がってデフレは解消…夢のような復活劇をみんなが期待した。しかし、その結果が思うように上がらず、安倍首相が大企業に働きかけ、大企業は従業員の給料を上げるよう要請する。しかし、日本人はラテンアメリカの人間とは違う。ブラジルとかアルゼンチンなどは少し先行きが明るくなると後先かまわず消費に走る傾向があるが、それから比べたら日本の問題は「低欲望」社会。個人は1600兆円の金融資産、企業は320兆円の内部留保を持っているのに、それを全く使おうとしない。貸出金利が1%を下回っても借りる人がいない。世界で稀な国民である。その国民に向かって、大企業が例えば月給1万円を上乗せしたからといって消費が伸びるはずもない。おそらく自民党の中でもアベノミクスを考え出した人と、それを阻止しようとする力関係はあっただろうし、下手すれば、それが理屈ではなく選挙区内の事情での対立かもしれない。

 

アベノミクスを考えた人たちはかなり優秀な政治家だ。おそらく消費税の上乗せにも最初から反対していたに違いない。「消費増税に向かったら日本は破滅」と説いたノーベル賞経済学者クルーグマン氏を招いて首相に会わせたのも同じグループの政治家たちと聞いている。しかし、その時にも今回のサミットの席上で「今世界はリーマン・ショック以前….」と言ったとか言わないとかとの屁理屈で国内問題を国際問題にかこつけて失笑を買っているが、理念を理解しないまま事を解決しようとする浅はかな政治家と優秀な政治家を一色単にしてまとめようとして失敗する。国内にたくさんばらまいた円を海外で良い格好するために使うだけでは、うまくいくはずがないのは自明の理だろう。デフレ脱却には、まず国内市場の活性化が必要で、そこから給料上がる感が先にきて、つづいて物価も上昇する順でなければ、日本国民が消費する訳がない。しかも、その間に強引な会見など国民があまり好きではない話題を挟む物だから、もうどうにもならない。まぁ、今の政権の大きな失敗と言えば、真理の見えない首相を取り囲む利口な政治家たちと馬鹿丸出しの政治家の間をとるような「八方美人」政策だったに違いない。そこに「選挙」が絡んで、この国がどん底を向かわなければよいが。

 

話が飛んだが、オバマのスピーチはなかなか素晴らしいものだったと思う。こんな世の中では、核軍縮がすぐに望めるべくもなく、核をなくそうという発想が世界に少しぢつでも広がることが大事だ。その意味で、政権最後とは言え、オバマのスピーチは素直に素晴らしかったと思う。 オバマのスピーチ全文

 

アルゼンチンも、信条とは別に暗い話題が続いたクリスティーナ政権が終わって、マクリ政権の元、かなり積極的に動き始めてはいるというものの、本格的に成果を得るのはまだまだ先のような気もする。しかし、そろそろ楽しく文化を始められる時代が来てくれないと、世界は終わってしまう。