ニカラグアでの収穫

_DSC9009X24時間のつらい旅を終えてマナグアに辿り着いたが、とりあえずホテルに入ってビールを一杯。そのままよく寝るはずが年齢が重なるとなかなかそうも行かない。熟睡したと思って起きるとまだ3時間ほどしか寝ていない。で、はっきりと目覚めてしまう。恐ろしい「時差」である。しかし、こちらのマネージャーとは夕方3時の待ち合わせなので、ゆっくり資料の整理やら写真の整理で過ごすことになった。一応今回の焦点はカティアのバックバンドの決定だ。じつは昨年ここにやってきて予定メンバーの収録をしたのだが、これがかなり酷かった。別に彼らに責任があるとは言わない。というのは、もう長く中南米諸国とつきあってきて、招聘_DSC9031Xする2年も前から、こちらの要求にあったメンバーを決めて、集合写真を撮って、しかも録画まですると言うこと自体が彼らにはあり得ない話だからだ。今までいろいろな国でいろいろな体験をしてきた。例えば、キューバからシエラ・マエストラを招聘する1年前、メンバーは決まっていたが、管をもっと良いのにした。が、集合時間になってもそのトランペットがやってこない。で、みんなで探すがどこにもいない。次に女性歌手は私が大好きだったシオマラ・ラウガーを指名したのだが、これがまた現れない。しびれを切らせて私がレンタカーで家まで迎えに。と、シオマラは子供の手を引いて家の前でのんびりしているではないか。ああその話聞いていたけど、まだまだ先の話だと思ってた、と。で、車の中に無理矢理拉致して会場に連れてくるとようやくトランペットの男も現れていた。で、今度は最初から来ていた数人が次の仕事がある、と。結局撮影時間は30分にも満たなかった。それでもまだ良い方だったりする。あるときはどうしてもメンバーが集まらず、そこにいたマネージャー氏に、らしい洋服を着せてとりあえず撮影し、後で変更になったことにしたことだってある。今だったらフォトショップという素晴らしいものがあるから顔だけ取り替えることもできるが、当時はどうしようもない。だから事前のチラシやポスターと来日メンバーの顔が違うなんて事もよくあったのである。しかし、そうしてどうしようもないことをやらかす音楽家に限って素晴らしかったりする。困ったものだ。世の中、スポンサーを中心に世界が廻っているわけではない、と大声で叫びたいが、日本という国では通用しない。

 

前回のニカラグアも実はそれに近いもので、まだ時間がありすぎて正しいメンバーに声はかけられない、というのが事実だったと想像する。だって、カティアの娘は素晴らしい音楽だったが、息子はまだ学生のとてもプロとは言えないものだったし、他のコーラスもとてもじゃないが、と言う連中だったからだ。で、最後の打ち合わせで、私は思いきりマネージャーを叱りつけた。日本から何度も何度も確認したことはどこに消えたんだ、大体日本に気があるのかどうか。他にもいろいろ思いの丈をぶつけてやった珍しいケースだった。

LA-CUNETA-SON-MACHÍN
それで日本に帰ってからも何度か連絡をしているうちに、カティアが本腰を入れ始めた。今回ここにやってくる数週間前の話である。これが、本当か、彼らと一緒にできるのか?と言う驚くようなメンバだった。今年度のグラミー賞ラテン・ロック、アーバン、オルタナティヴ部門の最優秀アルバムにノミネートされているニカラグアでは今乗りに乗っているグループだったからだ。このグループとステージを分け合うのはよいが、どうやって一緒にやるのか、と言うのが問題。しかし、彼らはニカラグアの一番の人気歌手カティアとは実は何度かステージも一緒になっている上、カティアのギタリストはそのグループの重要メンバーだったのだ。これは話が通じるかも、と言うのが今回早くやってきた理由だ。

 

グループの名前は「ラ・クネータ」。こちらで流行っているクンビアを軸にした非常に面白いグループだ。その昔、エクアドルから女性歌手をつれてきたときに、ちょうどキューバからエクアドルに亡命してきていたオマール・ソーサがいて、彼をキーボード兼ピアノに据えたことがあるが、あのオマールとも親交があるグレッグ・ランドゥがプロデュースしているCDがth今回のグラミーにノミネートされた。マリンバを駆使したり、ラップが飛び出したりととにかくユニークで世界のアンテナの高い連中から既に愛されている若いグループだ。で、彼らはなかなかマルチな音楽家たちで、カティアの伴奏もかなりできているという。今回はその辺の確認をした上での交渉である。グループの中にはあのニカラグア解放戦線(FSLN)のテーマ・ソング「サンディニスタ賛歌」の作者で世界的にも知られているカルロス・メヒア・ゴドイのファミリー兄弟もいる。これが実現すれば、現在のニカラグアを代表する女性歌手と、今乗りに乗っている注目グループとの共演と言うことになる。あとは、この二つの個性をどうやって一つのステージで花咲かせるか、だ。しかし、まずは良い音楽家たちが集まることが何より大事だ。しかも本人たちがそれを希望しているわけだから尚更だ。

 

今日マネージャとの話の段階では非常に好感触を得ている。あとはカティアとの明日の会談次第。楽しみなような不安なような、しかしやるしかない、の気分である。