難題の連続で、疲れる日々…

 今年の弊社は何かと難題が降りかかる。最終的に何とか乗り越えてはいるのだが、それにかける時間と労力が半端ない。考えて見ると、年初のタンゴの来日日が正月の4日というのに、直前になってバイオリンが変更になって確か昨年末の30日に彼女だけがやって来た。で、他の全員が4日について、8日にタンゴはゲネプロ、同日キューバ一行到着。9日にキューバがリハ開始。同日、タンゴが川崎で初日。10日キューバが新潟でゲネプロ。11日キューバ初日。思い出したくもないスケジュールだったが、これに加えて、毎年やっているタンゴダンス選手権のDVDの編集が遅れていたから、タンゴの開演前の映像がついに初日に間に合わない、なんてこともあった。いい歳して、こんなことやってちゃいくら命があっても足りない。でも、タンゴが終了した辺りからは少し落ち着いてアルゼンチンとブラジルに行ったが、ここで少し前に書いたロマンティカ・ミロンゲーロの問題。電話でマネージャーのセバスティアンと話したが、人間は悪くなさそうなので、帰国後に処理と思って帰って来たら、これが大変な結末を迎えたことはすでに書いた。で、社員の人数が少ない中、アジア選手権に突入、無事終了と思ったら、社員の一人の具合が悪くなる。で、ひと騒動。たまたま、8月からは以前弊社にいた人間が入社することにはなっていたが、それまでは弊社はほんと片肺飛行状態だった。同時に、今回のブエノスアイレス市から押し付けられた審査員の採点方法が元で、クレーム。これはしかし、規則変更の不備がそのまま吹き出た形で、冷静に対処。これもなんとかくぐり抜けて来た。

 後は、今年は大きな来日アーティストは11月まではないから、少しゆっくりできると思うが、これから世界選手権と、来年やってくるダンサー、歌手の選定のためアルゼンチンへ、また11月からのオルデナリスウとの打ち合わせでブラジルへ行くことになる。同行するスポンサーのスケジュールを聞くと、とても仕事ができる日程ではないので、少し早く入ることにした。数年前、いよいよ年齢をとってきたので、後輩に仕事を譲っていこうとして、会社の仕事はできるだけ彼らに任せるようにして、特に夏の時期にはタンゴダンス世界選手権があるので、その時期にアルゼンチンに長くいて、アーティストたちとできるだけ多くコンタクトをとるようにと、1ヶ月近くを南米で過ごしたことがある。私は昔から、人に仕事を教えると言うことは自分がその仕事をしないこと、と決めていた。今まであまりにも一人で決めて、進めてきたのを知っているので、できるだけ最初から、今の社員たちにも、自分で企画し、実行し、進めて欲しいと願っていたのだが、今はそうはいかないのだろう。やっぱり時代が違うのだろう。私の時は、やりたい仕事を任された場合には、まず、大まかな仕事の進め方と予算を当時の社長に提示し、何か重要な変更が出てきたら相談をし、しかし、朝起きてから夜中までそのことばかりに従事したものだ。夜はマスコミからスポンサーとの付き合いが多かったが、弱小ジャンルを大きく広めようとすると、まずはその辺でアピールする必要があった。そうやって働いてきた人間だが、今現在同じことはできない。当時私は後輩たちに「われわれの仕事は、士農工商の次に芸人がいて、その下の仕事」と公言して後輩たちを引っ張ってきたもの。当時の後輩たちに、現状を説明するわけにはいかない。余りに時代が違いすぎるから。

 働き方改革。まず、芸能関係の仕事が実はこれとの整合が一番難しい。大学を卒業して最初に入ったレコード会社だって、録音の仕事なんか、夜中から始まって朝までなどというのは何度もあった。しかし、仕事が楽しかったから、別に何とも思わなかったもの。今はそうはいかない。できるだけ好きなことをやりたいと思って、こんな会社に入ってきたからには、時間で仕事をはかることなんてできないのだが、昔のままやったとしたら,それこそ「ブラック企業」となる。だから、同じような仕事をする事務所は少しづつ無くなってきた。たしかに、これでは音楽の世界も「大きな」会社に所属している芸人ばかりが売れてしまうのはしょうが無い。しかも、ワールド・ミュージックなど、それでなくとも少子化で少なくなった若者の世界にマーケットが拡大するわけもない…..と、今日は恨み節。しかし、世の趨勢には逆らえない。これからこの社会に生きて行く人たちの奮闘を祈るしかない。

 そうこうしているうちに、巷では吉本興業の話題で一杯だ。まぁ、はっきりって興味はないが、会社も芸人もどっちもどっちにみえる。しかし、もうすでに何年も前から気になっていたのが、「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫」の件。次は吉本のHPに自慢げに乗せられている吉本が株主の会社一覧。

株式会社フジ・メディア・ホールディングス / 日本テレビ放送網株式会社 / 株式会社TBSテレビ / 株式会社テレビ朝日ホールディングス / 大成土地株式会社 / 京楽産業.株式会社 / BM 総研株式会社(注)/ 株式会社テレビ東京 / 株式会社電通 / 株式会社フェイス / 株式会社ドワンゴ / 朝日放送株式会社 /  株式会社三井住友銀行 / ヤフー株式会社 / 大成建設株式会社 / 岩井コスモホールディングス株式会社 /  株式会社MBSメディアホールディングス / テクタイト株式会社 / 松竹株式会社 / KDDI 株式会社 / 三井住友信託銀行株式会社 / 株式会社みずほ銀行 / 関西テレビ放送株式会社 / 讀賣テレビ放送株式会社 / 東宝株式会社 / 株式会社KADOKAWA / 株式会社タカラトミー/  株式会社博報堂 / テレビ大阪株式会社 / 株式会社博報堂DY メディアパートナーズ / クオンタムリープ株式会社(注)BM 総研株式会社はソフトバンクグループ株式会社の完全子会社です。

 吉本興業の歴史は素晴らしいし、ここまで巨大になってきた歴史は目を見張るものがあるが、TV局にここまで出資して、思うままに動かせている事が大問題。原因だけで無く、この間関西の政治家とお話ししていたら、その方は音楽好きで、レギュラーの音楽番組を持っているらしい。ギャラはと言えば、雀の涙程度らしいが、その政治家はこれで稼ぐ気はさらさらない。しかし、その政治家の所に「先生、弊社と契約したら少なくてもその数十倍のギャラは稼げますよ」と誘ってきたという。その政治家は基本的にいまのメディアのあり方には疑問を持っているから「いや、結構」となったらしい。その政治家には、断るだけでなく独占的にメディアを牛耳る形に是非ともメスを入れてもらいたいものだ。まぁ、今吹き出してる問題で、少しは何かが変わってくれる….まぁ、今のところ吉本も、芸人も、メディアとの癒着もそう変わりそうもない。恐ろしいことだ。

 しかし、それにしても、一つの芸能プロダクションがこれだけ大手のメディアを牛耳る姿は恐ろしい。憲法の問題でも、日教組が駄目だったせいで、教育がすっかり右寄りになった結果、若い層が右傾化してきた。戦争の悲惨さを直接語り聴いた世代とは全然違うから、若い層を取り込んでいよいよごり押ししようと行った参議院選挙は、憲法を大声で叫ぶ政権の行ってることとやってることの利害に気づいて、結局選挙に行かなかった若い層が急増した。学校で仕込まれた話と現実の違いに気づいて選挙を避けた、とみるのが正しいと思う。

 まぁ、こんな時もあるだろう。難題の途切れる時を待つしかないか?