2020年春のタンゴシリーズ完成までの顛末!そして最高のスタート!______その2

 ダンサー陣も昨年連れてきた最高のカップルの中からの3組。1昨年だったかの世界チャンピオン、アゴスティーナが昨年やってきて「本田さん、来年のタンゴのダンサーもの凄いねぇ。ブエノスでみんな言ってるよ〜」と驚いていたが、ガスパルの尊敬する仲間たちでもある3組と、私が以前から素晴らしいと思っていた1組だ。

foto por Uto

 そして歌手は、その昔、今は亡きアルゼンチン・ギター界の巨匠、フアンホ・ドミンゲスとも良く日本に連れてきたバネッサ・キロス。バネッサを一番最初に連れてきた時、彼女はまだ18才。まるで鉛筆のように痩せていて、歌だけは抜群に上手い女性だった。日本には何度も連れてきていたが、あのセニョール・タンゴが現在の大シアター・レストランになってから、その専属歌手になって,ギャラがべらぼうに上がってなかなか呼べなくなっていたが、久しぶりに声をかけたら「喜んで!」となった。新旧タンゴのどのレパートリーも謳う実力最高の歌手で、なにしろ常に安定した声を聞かせてくれる。ちなみに、あのセニョール・タンゴは、もう30年以上前にホセ・バッソの楽団で招聘して仲良くなったフェルナンド・ソレールが共同オーナーで頑張っている。現在NYに住むパブロ・シーグレルとも仲間で、1昨年だったかあの店の特等席で3人で飲みながら思い出話に耽ったこともある。

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 さて、実はこのキンテートの中で紅一点、チェリストのカルメン・レンカルが病気で来日できなかった。彼女は,ニコラスと同様グレコス兄弟のセ婦テートで始めて日本に来ているが、ハンガリー生まれの美人で実力派。タンゴはもちろんジャズ寄りのグループにも度々呼ばれて演奏している。何しろ美人で実力会って,愛くるしい性格は客席からも十分に伝わるから、日本でもファンが多かっただけに,残念だった。で、マティアスに,もうどうでもいいから実力だけは彼女に劣らないチェリストをと言ったら彼の関係するオーケストラで活躍し、若い頃にはUSAでも本格的に演奏してきた女性を選んできた。ジャケリーン・オロクだ。何しろ突然だったから初めて会ったのがブエノスでの最終リハの時。実力純分、カルメンとはまた違った魅力あるチェリストだった。来日してリハを重ねるまでは緊張してか余り笑顔を見せなかったが、リハの休憩時間に「今でこそタンゴ界にも実力あるチェリストが生まれているけど,昔は上手いチェリストを探すのが大変だったんだけど、カルメンといい、君と言い、本当に上手いチェリストが出てきたもんだ」と話したら始めて笑顔で,それからのステージでの躍動ぶりは凄かった。

 2月6日、相模原市民会館でのゲネプロ。今回会ってきたメンバーは殆どこの民音タンゴ・シリーズに参加してメンバーだが、リーダーのマティアスとジャケリーンだけが,日本のスタッフの舞台、音響、照明の素晴らしい仕事ぶりを知らない。ゲネプロの初日(5日)は照明はデータのインプットばかりで実際のライティングをこの二人は確認していないが、二日目のゲネプロでは、小節ごとに変化する細かい照明に出会って、簡単。俄然演奏も力が入った。南米というのは、困ったもので,本気を見せ合うのは実際のショーの時だけ。リハーでも「本気」を見せないのが美徳だから困る。こうして7日、神奈川県民ホールでの初日は、スタッフの頑張りもあって大成功に終わった。一番心配していた彼らのオリジナルも十分評価されたことが嬉しい。そのために彼らの喋りの位置も成功した。それと、アルゼンチンではお互いに存在を知ってはいても、ステージ上の出来を確かめている者はお互いにわずかしかいない。だから、初日の本気のパフォーマンシにお互いが驚き、それからはすべてが好循環し始めた。毎年自分の創ってきたステージは「今年が一番」と思うが、本気で大好きなショーと相成った。

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 新旧の質の高い演奏が並ぶ公演は日本国中、大評判で進んでいて,もうあと少しという所で起こったコロナ・ウィルスの問題だ。大分前から気にはしていたが、まず、日本の後に控えていた台湾公演9ヶ所は10月に延期。弊社が主催する2月29日予定のグランミロンガはなにしろダンス・パーティ。密着接触の最たるものだし、まわりも中止、延期が増えてきたので結局中止にした。キンテート・グランデの方は天井の高い会場ばかりだし、まだ他の公演の中止もさほど多くなかったのだが、今度は主催者の方からストップがかかった。いよいよ感染が拡大してきて,確かに予定通り続けていたら、メンバーがアルゼンチンに帰る頃にはいろいろな規制がかからないこともない。結局中止と相成った。他の問題とは別で、インフルエンザとか健康の問題だけは逆らえない。後半時期に招聘していたクリバスも一緒に演奏していたコトリンゴ側とも協議の末、丁度半分ほどのところですべて中止にした。大痛手だが、こればかりはしょうがない。秋に台湾にやってくる時にどこか東京でできればとも思うが…。中止と言っても,今度は帰国便の手配だ。たまたま、アメリカン航空で買っていたので、変更オできることになった。ヨーロッパ廻りでやってきた3人(ビザの関係)は新たに買う必要があったが、全体としてはかなり安く済んだ。

 タンゴ公演の終わり頃やってきたクリバスは、素晴らしいグループだったし、反響も良かったのだが、結局コトリンゴとの共演、クリバス・ソロ、名古屋の3回だけの公演だった。しかし、地方での二つ、大阪のビルボード公演はキャンセルとなった。コトリンゴさんのおかげで,その間急遽録音の仕事も入ったので,彼らとしては満足して帰ってくれた。しかし、これは予定通りのトルコ航空便。今度は直前にトルコとシリアの戦争勃発か、との問題もあったから心配したが、後ろにいる大国間の忖度合戦のおかげか無事帰国することになった。彼らもまた日本での再会を約束して見送った。とても弊社らしい仕事でなかったのが,残念。なんだか、仕事人生終盤なのに、経験したことのない問題にぶつかることが多い。それでも,無事にみんなを帰せたんだから良しとするしかない。