アルゼンチン、アルベルト新大統領の閣僚発表!

 実は前のブログを書いていて,夜中に起きると明日土曜日に発表される新内閣の発表(未定もある)の再放送があって、また眠れなくなった。日本のTVシステムのアルゼンチン導入に大奮闘してくれた友人は,今回は見送られている。しかし、全体になかなか凄い布陣だ。これはある程度期待できそうだ。

                  マルティン・グスマン経済大臣

 鍵を握るのは噂通り経済大臣に就くマルティン・グスマンだろう。1982年生まれと言うからまだ37才。ラプラタ生まれ、ラプラタ大学卒業で、ブラウン大学で博士号取得、後にUSAのコルンビア大学で教鞭を執り、ノーベル経済賞の選考者であるヨセフ・スティグリッツに師事して、一緒に活躍してきたエコノミスト。マクロ経済と公共債務を専門とするエコノミストで、任命前のインタビューでは、速やかに取り組むべき課題は債務再編で、IMFに対し元利払いを2年延期する交渉を進めていくと発言していた。同時にブエノスアイレス大学でも教鞭を執り、スティグリッツとは沢山の共著も著している。

 速やかに取り組むべき課題は債務再編だが、IMFに対し元利払いを2年延期する交渉を進めていくと発言している。スティグリッツを通してすでにIMFとの交渉を始めていて、IMFも多少は理解を示し始めているとか。まぁ、どこまでその交渉力が通用するか眺めるしかないが、考えてみると、あの最悪と言われたカルロス・メネムが大統領になった時、アメリカの議会に乗り込んで「これでは借金は返せない」と1ドル=1ペソを敢行、反対する労働組合〔彼の大票田だった)に思い切り反旗を振りかざして経済発展させた過去がある。メネムは、その後堕落政治にまみれてさんざん汚名を流したが、初期の経済政策的には確かなカンフル剤で成功した例といえる。

 アルベルト・フェルナンデス大統領が前クリスティーナ政権で務めていた内閣官房長官にはサンティアーゴ・カフィエロが就任。内閣の顔として活動する。1979年と言うから現在40才、彼も若いが、前ブエノスアイレス州知事だったダニエル・シオリの州政府で要職を務めて名を馳せた。次に公共事業大臣はガブリエル・カトポディス。ギリシャ系の移民の子でブエノスアイレス州のヘネラル・サンマルティン市政党「サンマルティンとの約束党」のトップだった。フェリペ・ソラ元ブエノスアイレス州知事が外相にそれぞれ就任。 中央銀行総裁にはエコノミストで元中銀副総裁のミゲル・アンヘル・ペッシェ氏。外相には元ブエノスアイレス州知事のフェリーペ・ソラが就任。

トリスタン・バウエル文化大臣

  われわれにとって最も興味のある興味のある文化大臣は,あのイバラ市長(大火事事件で失脚)の時代にタンゴダンス世界選手権や、ブエノスアイレスの歴史的建築遺産に目をつけ,大がかりな復興運動に着手した友人のグスターボ・ロペス氏就任を期待したが、全体的に若手で固められた閣僚には、前メディア、コンテンツ長官だった著名な映画監督トリスタン・バウエルが選出された。彼の最新作品はマクリ政権の4年間をドキュメンタリーで追いかけた「破壊された土地」だった。派手さはないもの、しっかりした文化政策を期待したいところ。それでも我が友人のグスターボ・ロペス氏はアルゼンチン国内の全ての通信網を支えるENACOMという大きな政府系会社の副総裁におさまった。イバラ・ブエノスアイレス政権で文化長官を務め、イバラが失脚して、今度は政府系のTV局カナル7の総裁、そこで日欧米がしのぎを削ったデジタルTVシステムを日本方式に決定、今度はこのENACOMの総裁だ。全く出世欲というか、その手の話と無関係に生きてはいるが、やはり世間が離さないということだろう。

 政権委譲についてはフェルナンデス次期大統領は現地メディアとのインタビューで、大統領選挙直後のマクリ大統領との面会は良かったものの、その後、ボリビアのエボ・モラレス大統領のメキシコ亡命などで主張が対立するなど、意思疎通が取れていないことを指摘。現政権からの情報共有も円滑に行われないなど、政権移行は「フィクションでしかない」と批判していた。この間のこのブログにも書いたが、せっかくUSAからの強い反感を押さえつつあるはずだったのに、12月3日のトランプのブラジル、アルゼンチンの鉄鋼、アルミへの大幅な関税上乗せ表明で、逆風が吹き始めたかに見えたが、これは米中間の農産物の輸入関税大幅高政策の効果が薄れるための発表が本意との見方が生まれ始めている。新政権にとってはさほど影響がないという見方も出てきている。