選手権を巡るいろいろな動き(2)

 今回で16回目になるタンゴダンス・アジア選手権も15,16日に無事終了した。弊社の社員は8月まで、2人足りない中での開催だったから、冗談ではなく、協力団体や、協力してくれたボランティアの皆さんの応援なくしては成り立たなかった。しかも、申請者数は約130組弱という史上最高だったから、全てが大変だった。しかし、観客の盛り上がり、参加者のパフォーマンスの質ともに、今まで類を見ない選手権になった。

 さて、選手権の詳報については次に書くとして、この選手権にまつわるいろいろな事件があり、我々を苦しめることになった。今後のために書き留めておきたい。

 選手権が始まる一日前の 14日、FJTA(日本アルゼンチンタンゴ連盟)の飯塚会長から電話があった。「ロマンティカ・ミロンゲーロ」のSがとんでもないことをFBにあげている。本田社長と話した内容を録音した声を上げて、ロマンティカが来日できないようにしたのは本田社長で、私が警察に訴えたとなっている」というのです。それにしても、最後の最後まで、彼のことを信じようとしていたのに酷いやつだ。その前々週だったか、元世界チャンピオンのチズコさんから電話があり、Sと会ってビールでも…というので彼女の教室で会うことにした。基本は「ATPAアルゼンチンタンゴ振興会のミロンガと時間がダブる事は避けたのだから、色々協力して欲しい」ということで、ベースやキーボードを貸して欲しいという。私がアルゼンチンにいるときにスタッフから「選手権と同じ時期にロマンティカ・ミロンゲーロが来てミロンガをやるらしい」という話を聞いた。完全に選手権の時期にぶつけてきてるなぁ、と思い、彼がFBの友達になっているから、電話。すると「できれば、一緒に選手権を盛り上げたい」というから、それは良いけど我々は同じ時間にウェルカム・ミロンガとフェアウエル・ミロンガをやっている。この時間を外して…

 といったら「実は選手権は完全に時間はずらしてあって、そのミロンガの方は知らなかった」というから、「我々のオフィシャル・ミロンガも同じ事業で、ATPAが責任運営しているから、ぶつかるのは困る」と言ったら、では日曜日は我々の方は夜11時からにする、というから一応それを持ち帰ってATPAと相談。ATPAはすでに企画が進行していて、今更どうにもできないが「時間をずらすのなら」と言うことになっていた。

 そして、ここからはあの最悪のFB事件が起きた後、相手がFBの全てを消した後に、飯塚さんが事情をFJTAの会員に対して書いたので、私もFJTA会員に対して少し詳しく書いたメールだ。

 まぁ、飯塚さんが書いたので、私も長くなりますが、付け加えておきます。このとんでもないFBの話を飯塚さんから受けたのが金曜日の午後。選手権にとって前日の最も忙しい時でした。しかし、これは私だけでなく、一生懸命準備中の弊社のみんなにも大変な迷惑のかかる話なので、その日の午後は自宅でその対処に忙殺されました。すぐにセバスティアンにも電話しましたが、当然出ません。前日電話のあった時はソウルからと言ってました。彼がチズコさんの事務所が持っている部屋?に滞在してたのを知っていたので、まずチズコさんに電話。「なんで俺が…」ということと、録音したテープが完全に編集されていたものであること。それまで、ATPAもセバスティアンと話して「日曜日が売れていない、と嘆くからだったら、ATPAで抑えている会場で彼らが演奏しては?売ったチケットは全て自分たちのものにすれば良い」という善意の提案までしていたのです。しかし、どういうわけかその提案を無視し(提案した段階では池袋にはまだ会場費を払っていなかったそうですが、結局1日だけキャンセルもできなかったのでしょう)なんの連絡もなく別々に時間だけずらして行うことになっていたのです。
 彼が日本に来て、チズコさんの教室に呼ばれて彼と話しました。私は彼とはブエノスにいた3月末頃から、一貫して「やるのなら、ATPAのミロンガと時間が重ならないようにするなら、宣伝の協力くらいはできるし、ベースやキーボードなど、貸してくれと言っていた楽器も貸そう」と言っていたのです。条件は「全員ビザを持っていることと、深夜12時以降はアルコール類の販売を控えること」。ところが帰国したら、もうATPAの宣伝は始まっていたし、ATPAは客が取られようと、自分たちの力でなんとかやりきると考えていたのです。だから、今年は同じ時期に何かを手伝うことは無理、でもどうせなら両方共が良い結果で終われるように、棲み分けを!と言っていたのです。
 ただ、私が一貫して言っていたのは、まず、彼らのビザを誰が申請しているのか、セバスティアンは自分がと言っていたけれど、それは普通はありえない話。当初は向こうの外務省がやってくれている、と言っていました。しかし、外務省が日本の大使館に依頼してビザを発給する場合は、例えば文化交流で日本で開かれる交流イベントに向こうの政府が派遣し、無償でパフォーマンスする場合にありうるだけ、なのです。池袋で朝まで、というイベントは考えにくい話ですが。ところが、私が高田馬場を訪れて彼と最初に話した時には、最初は外務省の誰に依頼したのか、どうやってビザを取得するのか、と問いただしました。と、後日今度は外務省から在日アルゼンチン大使館のP氏に頼んでイタリアで発給されることになっているという。何か特別な方法でやっているのか、と思っているうちに、今度はチズコさんの方で手配していたジェラルディンたちダンサーのビザが期日までに発給されていないため(彼らは都内数カ所でクラスを行うため智寿子さんのところで芸術ビザをしんせいし、普通は1週間ほどで発給されるのに、されなかったそう。チズコさんは英断を下し、クラスもミロンガ出演も中止したのです。この決断は、当たり前とはいえ、迅速に行ったことは素晴らしかった。
 しかし、その中止決定がロマンティカの応援をしていた人たちには不安を抱かせる結果になったし、ATPAの応援をしている人たちには「ビザが取れないのだったら中止を早く発表するべき」という思いができたのだと思います。その辺りの話に関わってきた中に弁護士や、日本の外務省関係の人がいたらしく、当然、動き出したと聞いています。在日のアルゼンチン大使館の文化担当官はそんな話は聞いていなかったし(これは私も確認しました)、イタリアでビザを発給する場合は、日本の外務省がわかっているはずでイタリアの日本大使館ではそんなことは全く聞いてない、とのことだったらしい。
 ということは、もともとビザなしで、という疑惑が湧いてきました。ところがその弁護士が、それ以上に問題があると気づきました。彼自身が観光ビザで入国していて、営業をしているのは違法だし、誰かの銀行アカウントを借りて営業しているのは、貸している方も借りている方も違法、なのです。セバスティアンの営業権の問題ですね。もう、完全にアウトです。しかし、ビザさえ本当なら(彼は最後までビザは必ず月曜日にイタリアで発給されると言っていました)何か方法はあるのかも、と一応月曜日までビザの結果を待とうとしていました(この会議にはATPAと私に飯塚さんを呼びました。喧嘩になるようなことは避けて、と最後まで可能性を信じてやろうとなっていたのです)
 ところが、いろいろな情報が入ってきました。おそらく弁護士氏かその仲間がもう限界と感じたのでしょう、警察に通報したと聞いています。これはセバスティアンは怒るけれど、まっとうな通報です。
 で、警察は池袋の会場に中止を要請、セバスティアンにも出頭を命じ、彼もすぐにFBで中止を発表。もしビザが取れていないで入国し、池袋で演奏でもしようものなら…恐ろしいことです。ところが、あるところから、中止を発表したにも関わらず、別のところで秘密でやると考えているらしい、と飯塚さんに情報が入ったのです。これはタンゴ界最大の不祥事に発展する可能性がある。とも考えて、チズコさんにも電話しましたが、どうやらそんな動きには発展しませんでした。それを飯塚さんに教えたのは他でもない、ロマンティカのことを大好きで一生懸命応援していた人からの情報だったと言います。しかしその後、木曜日の夜、突然セバスティアンから電話がありました。「お前が警察に通報したんだろう」というから、「とんでもない、君のことを信じて、いろんな動きを止めようとATPAや飯塚氏を集めて、通報を止めていたんだ』と話しました。なんだか様子が変だったのですが、私の知ってる限りを話しましたよ。その時の会話を録音し,それを編集してとんでもない結果に持って行こうとした非常に悪質なやり方でした。これをどうするかはこれからじっくり考えますが、あまりに卑劣です。
 まぁ、しかし、そんな話はラテンの世界ではよくある話ですし、そんなことをしたら自分で自分の首を締めることになるのは彼も知っているんだと思います。今はそのFBは消えています。私の声が編集された内容は「私のビジネスは選手権が100%のビジネスで、オフィシャル・ミロンガは、ATPAが責任運営で彼らのビシネス。ミロンガは形的には私のビジネスとは関係ない。しかし、一緒に選手権を盛り上げようとして始めたわけで、私にはミロンガを応援する義務があると考えている」と話したところの「選手権は100%私のビジネス」というところだけを編集して、本田は「選手権を100%ビジネスでやっている 」と載せていたのです。それから、飯塚さんの件については「みんなで話をして、ビザの発給されるというまで待とう、と話していたし、中止になった後、警察が張っている中でもし秘密にでも強行したら必ず大問題=逮捕になる、と助言したおいた方が良い」と言ってくれたんだ、と話したのに、飯塚が「警察に話した」となっている。飯塚さんとの信頼関係も崩れる本当に悪質なやり方。可哀想なのはロマンティカだろうとも思います。まぁ、忙しい時にとんだ問題に巻き込まれたものだが、選手権もミロンガも大成功に終わった今は、とにかくタンゴ界に不利なニュースにならなくてよかったと安心しています。それでも、何かしてきたら、こちらはどこにでも出て真実を話す準備はできているし、この動きの証言者もたくさんいる。
 こんなことは書きたくなかったのですが、私だけではなく、チズコさんも含めて、ここに関係したみんなの名誉のために書くべきと思い筆をとりました。残念ですが、仕方ありません。飯塚さんも書いている通り、通報者はまさに「公益通報者」です。通報者に対してひどいことをすると怒った人は、何が彼を助けることになったか?これをよく読んでしっかり考えて欲しいと思います。彼のやったことは今は消してあってもその痕跡はみんなが持っていますから。みなさん、どうか私を警察に通報するタイプの人間などと思わないでいただきたい。
 タンゴを愛するみなさんは、もうこの話題は忘れて、しっかりタンゴを楽しむようにしてください。嫌な話題を長々と申し訳ありませんでした。

 これには後談があり、結局Sの仕業は、当初からビザ無しで公演しようというものだったらしく、善意で応援してきた人たちも一様に怒っている状態になった。以下は、友人からの情報だが、私におかしな電話(録音したもの)をした時に、なんとロマンティカは羽田に到着し、当然ビザがないから入れなかったらしく、空港に何時間か止められて、結局、韓国に向かったらしい。恐らくその間にロマンティカのリーダーともめたのか、誰かを悪者に仕立てる必要があったのではないかという。もうここまでいったら怒りを越えて笑い話。ビザもなし、営業権のないSが日本で会場は借りる、当然、日本人の応援者の銀行口座まで借りてイベントを行おうとしていたのである。ここまで酷い話は、今までまったくと言って経験がない。それにしても、とんでもない事件に巻き込まれたものだ。

 それにしてもいちばんの被害者はオルケスタ・ロマンティカ・ミロンゲーロであり、ただただ彼らのパフォーマンスを信じて心から協力してきた仲間の皆さんかもしれない。この業界で起こってはならない最低の話だった。