アジア選手権をめぐるいろいろな動き

 今年もタンゴダンスアジア選手権の時期がやってきた。10連休が終わって気がついてみると後1ヶ月と少ししかない。しかし、ここに来て、アジア選手権に向けてのいろいろな動きが出てきている。昨年から始めたオフィシャル・ミロンガに対して、もちろん進め方にまずいところはあったにしても結構批判が集まったこともある。元はと言えば、タンゴダンス界とは一線を引いている弊社が、アジア選手権を公平感を持ってっすすめる事だけで精一杯だったので、それぞれに行われていた事前と終了後のミロンガを一体化させて、主催をATPAという団体に任せたことが原因なのかも、とも思う。しかし、それもアジア選手権を盛り上げようと、どこにも嫌われていないはずのATPAという在日外国人教師を中心にしたグループのミロンガにオフィシャルの冠をつけて、もう少しフェスティバル感を持たせたいと始めたことだった。すると、今まで、自由にミロンガをやっていた関係者からいくつかのブーイングがきた。

 と、そこまでは説明すれば理解してくれると思っていたのだが、そこに、アジアで展開していたアルゼンチン人のプロデューサーがオルケスタ・ロマンティカ・ミロンゲーロという人気グループを同じ時期に連れてきて選手権を盛り上げたいと言うことになったらしい。もともと、選手権の時期をもっとフェスティバル的にしたいと言う意味合いからして歓迎すべき事なのだが、こうなると昨年まったく利益も出さずに批判だけされたATPAをまとめているグループが面白くないこともある。それでも、そのグループとは、元々が選手権をもっとフェスティバルっぽく持っていきたいと言う話から起こした話だったから、彼らは今年は動き出して会場まで押さえているわけだから、当然やると言うことになった。これはもう選手権としても、今年はそこに冠をつけるのは当然で、来年からは、すべての勢力と上手くいくような会議でももって解決したいと思っている。で、問題は選手権が終わった時、その後の時間が被っているふたつのミロンガを両方とも上手くすすめるにはどうするか、だ。選手権終了後は、オフィシャルの方は、もともと深夜0:00までだし、会場からも近いので、選手権関係者や審査員、新しい入賞者にはオフィシャルの方に来てもらい、ロマンティカの方は深夜以降の演奏だと言うから、その後はそちらに参加してもらう、という流れにすることだ。今年は、なんとかそんなことでおさめたいと思っている。

 ここでFJTAという2年前まで共催してきたFJTAという、日本の教師が中心の団体だ。これは大きな団体だから、選手権に協力的な人とそうでもない人が居るので、団体はいずれも後援団体になってもらい、両者の中でも一生懸命やってくれる人たちには組織委員会と言うことで主催に名を連ねてもらおうと言うことになった。はっきり言って、この人たちの献身的な動きでアジア選手権は昨年飛躍的に成功した事は事実だ。しかし、弊社の知らないところで開催されたATPAとFJTAの、ミロンガを巡る会議では、ATPAに対しての批判が多く、もう一つのミロンガに応援する、と言う声も上がったそう。もっとも、アジアのマーケットに世話になっている教師もいるから、アジアの有力者の押しているロマンティカに応援したいという気持ちがある人もいるには違いないが、問題は、そのプロデューサー側からも、過去に審査委員をやったアルゼンチン人側からも、是非、審査員を、と言う声が上がったことだ。これは困る。弊社がどこにも偏らず公平にやっている団体だからここまで評価を落とさずにやってきたのに、それを受け入れては元も子もない。この一線だけは守る義務がある。

 昨年から、アジア選手権のピスタ部門の優勝者が8月の世界選手権の決勝シードになったことから、審査員の決定にはブエノス市の許可が必要になった。市の関係者は、アジアで今起こっている問題はおそらく全く把握していないから、この間ブエノスで、市との協議でもかなりやり合った。難しい問題だ。その他、挨拶がしたいだの、審査員の自薦者が現れるだの、このアジア選手権には面倒なことが多すぎる。その辺の判断は完全に弊社が取り仕切っているので問題ないが、もう少し「公平で、楽しい」イベントのために関係者は力を合わせるようにならない限りは、タンゴ・ダンス界の発展は無いだろうと心から思う。

2019,2020年の公演準備

 さて、マルサンのタンゴ、パンチョ・アマートのキューバを無事成功させて、今度は6月のタンゴダンス・アジア選手権、8月の同世界選手権、11月からのブラジル「オリジナリウス」、そして2020年のタンゴの仕込みだ。
タンゴダンスアジア選手権の方はもう16年前から続けているが、これはあまりにも高齢化が進んだ日本のタンゴ界にあって、若い世代が起こしてきたタンゴ・ダンスというムーブメントを世界的な波にしたい、とブエノスアイレス市が始めた大イベント。我々はそのアジア選手権をブエノス市からの依頼を受けて2004年から続けているものだが、どうもタンゴというジャンルは一つにまとまらなくていつも苦労している。昨年は日本に居るアルゼンチン人たちと日本の教師陣とのわだかまりを解消すべく、両方の中から選抜メンバーで実行委員会を立ち上げて、首尾良く成功裡に終わらせた。

 しかし、今度はまたまた新たな問題が。アジア選手権に向けて、なんとかフェスティバル気分も盛り上げたいと、アルゼンチン・グループに任せたウェルカム・ミロンガ、フェァウェル・ミロンガをオフィシャルにしたところ、それまで自由にやっていたミロンガの主催者たちから不満が噴出した。今までは自由にやらせていたものを、もう少し進んだ、良い形にしたいと始めたのだが、これがその仕切りがまずかったせいか、不満が出ていたようだ。しかも、それに乗じて、アジアのマーケットで人気が出ているロマンティコ・ミロンゲーロというグループが、この選手権に併せて来日するという噂もある。選手権とは時間はダブらないものの、フェアウェル・ミロンガはぶつかりそう。日本人を立てずに乗り込んでく売るというのだが、そんなことができるのかはなはだ疑問だが、まあ、賑やかになるのは良いことだ。

 さて、3月21日から4月4日まで、今年、来年招聘するアーティストの契約にブエノス、リオと廻ってきた。ブラジルはいつもビザの取得が面倒で、最近は大使館のご厚意で3年更改のビザを頂いていたが、領事館のHPを観て驚いた。日本人がブラジルを訪問する場合、6月19日以降はビザが免除になるらしい。ブラジルの今の右翼政権がトランプアメリカとその仲間国にはべったりで、ビザは相互主義だから、日本もそれに応えるのが普通だが、ブラジルは一方的にビザなしを開始してしまう。ブラジル日本には犯罪人の引き渡し条約がない上、犯罪人でもブラジルで子供作った場合には、犯罪人であっても基本的には国外追放できないというルールがあるからと聞いた。それが、今回はあっさりt無視された格好。いずれにしてもビザ取得の煩わしさが亡くなるの非常に助かる。 http://cgtoquio.itamaraty.gov.br/ja/

 まずは、来年2月からの恒例のタンゴ・シリーズに選んだグループから。「キンテート・グランデ」という素晴らしいグループ。昨年誕生を知ったばかりの新しいキンテートだが、凄腕のキンテートだ。現在コロン劇場フィルハーモニーのトップにいるバイオリン、マティアス・グランデがリーダーだが、すでに世界的に活躍している名手だ。実は昨年のタンゴダンス世界選手権と同時に進行するふぇすてぃばるで彼らの名前を観たときから大きな関心を持っていたが、ブエノスに到着したときには彼らのコンサートが丁度終了していて地団駄を踏んだ。メンバーが凄い。ピアノは、セステート・マジョールなど多くのグループから圧倒的な人気で招待されているフルビオ・ジラウド。昨年だったかNYのカーネギーから招待された大物だ。最近あの世界チャンピオン、アグスティーナ&ウーゴのアグスティーナと同居して、ますます活動の輪を広げている。そして、このグループの現代版のアレンジも担当しているバンドネオン奏者がニコラス・エンリッチ。gレコ兄弟で来日し、ラウタロと並んで高い評価を受けた逸材。誰もが憧れるコロールタンゴのベース奏者、マヌエル・ゴメス。その美貌と演奏力でタンゴ界で最も人気の高いチェロ奏者カルメン・レンカル。時売れも過去に平ysの企画で来日している大物ばかり。あのネストル・マルコーニが太鼓判を押しているキンテート。マティアス・グランデは、亡きフランチーニを軽視してきたバイオリン奏者で、フランチーニの、昔のアレンジカラ、ニコラス・エンリッチやフルビオ・ジラウドなどの現代アレンジもこなす。例えば、奇怪なオリジナル曲ばかり演奏して若者に評判のオルケスタ・フェルナンデス・フィエロの本拠地CAFF(The Conservation of Arctic Flora and Fauna=北極動植物保護団体)でも演奏するが、その時は、若手タンゴ人のオリジナル曲ばかりを、まさにコンテンポラリーな演奏ばかりで演奏している。しかし、やはり魅力はフランチーニばりの、いわゆるタンゴ曲の演奏力が凄い。

ブエノスアイレスについてすぐ、普段は来日するダンサーの練習場としてたまに借りているアゴスティーナのスタジオデ、プレゼン用の撮影。凄い。全員の表現力が半端ない。全員が売れっ子だから、なかなか多くの時間が取れないが、合計5曲ほど録画と撮影。

 そして、今度はリオデジャネイロに飛んだ。もともとはアカペラ・コーラス・グループだったが、最近ちょっとしたメンバー変更があって、簡単なブラジル楽器も導入し、テアトラルなショーを展開する。数年前に日本と台湾公演も行って大成功したスルルー・ナ・ホーダのFabianoが加入したので、彼にスタジオの手配などを頼んで向かう。レミ海岸にあるホテルの会議室で、一応撮影。が、このぐるーぷは写真、撮影、演劇など多彩な集団で、コーラス編成でも、メンバーの立ち位置などがめまぐるしく変わっていく、何とも魅力的なグループだ。映像技術も素晴らしいので基本は彼らの作品でプロモーション材料は揃えることに。撮影後は、ボタフォーゴのショッピングの中にあるすしレストラン「寿」で食事。日本食は高価か、ブラジル人の経営する極悪か、と思っていたら、この店は料金も良心的で、食材の質も十分。日本公演は今年の10月だが、おおよその内容も打ち合わせて、楽しい時間を過ごすことができた。

そして、ブエノスに戻り、今度は今年6月のアジア選手権、8月の世界選手権の打ち合わせ。選手権とフェスティバルのブエノスアイレス市側の友人が市のすべてのイバンとの最高責任者になって、若い担当者になったが、これが何もしらにくせに高飛車ですべてが難航。と、言っている内に最も有能で、アジアの事情にも詳しい仲間がプロデューサーとして戻ってくることになった。が、今回の交渉は若い嫌な女性だ。まぁ、脅かしたり、なだめたりしながら何となく交渉終了。やりにくいがもう時間がない。